体験記 ~あの笑顔をとり戻すまで~
あの時を振り返って(7)
感染の疑いで発熱したり、肝機能が悪化したりといろいろあったが、治療は順調に進んでいた。
治療も終盤となった頃、てこずるプレドニンをリンデロンにかえてもらった。
これは甘くて飲みやすい。
始めからこれにすればよかった。
が、みるみる顔が満月のようになった。
髪の毛がほとんどない頭に、満月のようにパンパンの顔。
何を着せても、悲しいほど似合わなかった。
しかし、退院間近と知ってか、この頃の娘は満面の笑顔だった。
退院後は、娘を実家においておくことにした。
何人かの親しい友人には、手紙で娘の事情を打ち明けたが、本人にも伝えていないことを、皆にいう気にはなれなかった。
この外見の娘を連れていると、どんな噂が先行するのだろうと考えると、今は無理に連れて帰る必要はないと思った。
それに、これから冬に向かう季節で、風邪ひとつ引かせたくなかった。
私は京都と大阪を行き来し、娘は春まで京都で冬ごもりの生活を送った。
そして、約5ヶ月後の4月、娘はやっと自分の家に帰って来た。
以前のように遊ぶ娘を見て、この何気ない日常こそ、何にもかえ難い幸せなんだとつくづく思った。
それから1年9ヶ月、娘は元気に幼稚園に通っている。
でも、まだ通院治療は続いているし、おしりの筋肉注射やマルクには今だ大泣きして、抵抗している。
まだまだ不安や心配も尽きない。
でも、元気になった娘の姿に感謝し、この経験で得たものを大事にしながら、プラス方向に今後の人生をつないでいきたいと思っている。
(M・Nさん 2001年11月記)