体験記 ~あの笑顔をとり戻すまで~

笑顔をありがとう(2)

2000年10月、息子が8歳の晩秋のことです。

その日は突然やって来ました。

10月に入った頃から、あんなに好きで得意だった水泳教室を「辞めたい。」といい出しました。

「息継ぎが苦しくて、胸が痛い。」というのです。

私はこの時、水泳のレベルが高度になってきて、弱音を吐いているんだな、サボろうとしているな、とあまり真剣に取り合いませんでした。

しかし、10月下旬に差し掛かる頃から背骨のあたりや、胸、足が痛いといい出し風邪のような症状と共に発熱も見られました。

近所のかかりつけの小児科で診ていただいたところ、風邪でしょうという診断と共に少し様子を見ましょうといわれました。

でもこの頃、息子はもう自力で歩くことも困難で、ずっと待合室のソファに横になっていました。

一晩中、痛がる息子の背中をさすりながら、母親の直感、とでもいうのでしょうか、

「何か様子が違う。風邪ではない。もしや大きな病気では?」

という思いが頭から離れませんでした。

 

翌日、「たかが風邪ぐらいで、わざわざ日曜日に救急で診察を受けるなんて、大げさやなあ。」という主人を説得して、救急外来へ駆け込みました。

血液検査の結果、「白血病の疑い」ということで即入院となりました。

いろいろな検査の結果、息子の病名は「急性リンパ性白血病」のスタンダードタイプと告げられました。

「嘘でしょう?あんなに元気でスポーツの得意な息子が、病気になんかなるはずがない。」

ジェットコースターで地獄へまっさかさまに落ちていくように感じられました。

「白血病」という言葉は、私にも主人にも、“死の病”という認識しかありませんでした。

毎日、毎日、気がつけば、涙で頬が濡れていました。

一生分の涙を流したような気がします。

こうして、息子の5ヶ月間の入院生活が始まったのです。