体験記 ~あの笑顔をとり戻すまで~

ひとつの山をのりこえて(2)

夕方に電話が鳴りました。

「お母さん、やっぱり白血病やったわ。血液中に白血病細胞が69%ある。」

出るのは涙ばかりで、言葉は出てきませんでした。

「とりあえず、紹介状を書いてあげるから、明日の朝一番に病院に行きなさい。きっとすぐ入院になるだろうから、そのつもりで。大丈夫。今は治る病気だから。」

しっかりしなくちゃと自分を支えるだけで、精一杯でした。

ずっと気を張り詰めた状態。

心臓がギュッと縮んだままでした。

(後になってわかったことですが、上の子には、私の泣き顔を強烈に印象づけてしまったようです。)

 

緊張の中での診察。

子どもは、大人は優しい人に違いないと信じて、いわれるままおとなしく受けていました。

親から離れ、点滴のルート確保、そしてマルク。

それまでに聞いたことのない悲痛な叫び。

やっと出てきた顔には、そばかすのように点状出血がありました。

当然、これを機に、人間不信に陥りました。

無理もないはず、何人もの大人に押さえつけられ、すごい恐怖だったに違いありません。

しかも、お母さんも助けてくれない・・・。

入院して2日目の夜中、おむつも替えさせてくれず、「お母さんきらい。あっちいって。でていって!」と私のことを叩き、泣き叫びました。

孤独を味わい、たまらない気持ちになったのだと思います。

私も叩かれるまま、泣きながら、もっと子どもの味方になってやらねば、気持ちを分かってやらねば・・・と自分にいい聞かせました。

 

主治医の先生方もいい方で、子どもも少しずつ心を開いていき、

「先生も看護婦さんもみんな、大事に思ってくれるから、病気をやっつけようと、お薬を飲ませてくれたり、たまに痛いこともしたりするんよ。」

という言葉にも、頭では納得して、徐々に頑張る姿勢を示してくれました。