告知について

告知について小児がん」という宣告を受けた時、病名を患児本人に伝えるべきか・・・。

家族自身も子どもの病気を受け入れるまで大変つらい思いをしますが、同時に本人への告知の問題も出てきます。

また、ひと言に告知といっても、患児の年齢によって、伝え方やタイミングも違ってきます。

ここでは、みんながどのように“告知”に向き合ってきたか、いくつかの事例を紹介し、感じたことを記しています。

<患児が理解の難しい年齢の場合(幼児~小学校低学年くらい)>

事例1
幼すぎて理解できないと思い、あえて何も言わなかった。
入院中は子どもなりに、自分が病気であることをわかっていたと思う。
大きくなっても何も言ってこないので、そのままにしている。
事例2
病名を伝えなかった。
ただ、「体にバイ菌が入ったから、バイ菌をなくすために治療をしなければならない。」とわかりやすい説明で入院の必要性を話し、納得させる必要があった。
その後、患児が大きくなってから(小学校高学年)、本当の病名を告知した。
自分の病気のことは自分でしっかり理解しておかなければならないと思ったからだが、数年を経ているためか、本人は冷静に受け止めることができていた。
子どもからの質問には、どんなことにも包み隠さず、わかりやすく答えることを心がけた。
本人は病気は過去のことと割り切り、悩むようなことはなかった。
聞きたいことがあれば、いつでも主治医の先生に連絡できる、とも伝えている。
事例3
退院後少し大きくなってからの本人の質問に、包み隠さず全てを話した。
「自分だけが病気になり不幸だ」という考えを持ってもらいたくなくて、周りの多くの人が一緒に闘ってくれたことを伝え続け、感謝の気持ちを忘れず、自分の命を大切に生きてほしいと、いつも必ず伝えた。
子どもなりに理解し、受け止めてくれている。
事例4
入院時に病名もはっきり伝えた。
理解できていなかったとは思うが、病名も説明し、治療しなければならないことを話した。
小さいがゆえに、病名に関して大人ほどの衝撃を感じてはなかったようだ。
ただ、退院してから周りの人などに平気で病名を話したりして、親が慌てることもあった。
事例5
伝えたり告知したつもりはないが、皆が周りで病名を口にするので憶えてしまい、いつの間にか自分の病気を知っていた。
もっと大きくなったらどう思うのか、今はわからない。

赤ちゃんから幼児の時期に入院生活を送った場合、患児本人はあまり記憶がないので、 大変な闘病をしたという認識がないようです。

ただ、退院後の数年にわたる通院中に、治療の点滴や痛い検査を受ける中で、 自分の病気について不意に親に質問をぶつけてくることがあります。

そんな場合、親としてどういうふうに答えればいいのか・・・。

振り返って、 「あの時が告知のタイミングだったのに、自分の準備ができていなかった」 という話もよく聞きます。

告知をするのかしないのか、どの時期にするのか、どんなふうに伝えるのか・・等々、 ご家族で相談しておかれてもいいかもしれません。

<患児が理解できる年齢の場合>

事例1
病名を伝えなかった。
主治医と相談した結果。
髪の毛も抜けたので、本人が病名(がん)に気づいているのではないかと不安になったが、確かめるすべもなくそのままになった。
病気の話題を避ける感じになり、神経を使った。
きっと本人は気づいているだろうと思いながら数年を過ごした後、主治医と相談して告知した時に、実は全然気づいていなかったと判明。
しかし、何か重い病気に違いない、自分は病弱だと思い込んでいたこともわかり、病名がはっきりしたことで、本人は少しすっきりしたようだった。
事例2
病名を伝えた。
ごく初めの時期に伝えた。
ショックだったようだが、話したことで隠しごとがなくなったことは、とてもよかったと思う。
だからこそ、親子で病気と闘うことができた。
事例3
病名を伝えた時は、そんなショックな素振りを見せなかったので安心したが、それが「がん」であると知った時に、大変衝撃を受けたようだった。
「もう治ったのか、また病気になるようなことはないのか」と何回も聞いてきた。

親同士で話していて、元患児の子どもたちに共通している思いがあったことに驚いたことがあります。

それは、「自分はきっと長生きできない」と思い込んでいるということです。

これを知った時、正直ショックでした。

どうしてそんなふうに思っているのか聞いたところ、 やはり「とても大きな病気をしたから」「小さい頃に抗がん剤を使ったから」というのが一番の理由のようです。

小児がんも最近では7割以上が完治するようになり、 発病から5年・7年・10年と年を重ねるごとに親は完治を実感し安堵しているというのに、 本人たちがそんな思いを持っているのは残念でなりません。

ここで皆さんにもお伝えしたいのは、告知後の子どもへのフォローです。

“病名を伝えて本人も現実を受け止めた”だけでは、告知は不十分なのだと思います。

「病名」を伝えるのが告知ではなく、「どんな治療をしてきた結果、今があるのか」「将来何か心配しなければならないことがあるのか、ないのか」「完治といっていいのかどうか」等々、 未来に向けての不安を残さないように伝えるのが大切なのだと思います。

そういう意味では、家族だけでなく主治医の先生のお力を借りるのも大いに必要だろうと思います。

事実として受け止めなければならないことと、 余計な不安や取り越し苦労とをしっかり分けられたらいいなと思います。