体験記 ~あの笑顔をとり戻すまで~

白血病との出会い(7)

衝撃な出来事があった。

それは一緒に病気と闘ったTちゃんが亡くなり、お別れに行った時、私が息子に「話をしておいで」と声をかけた。

息子は躊躇することなく亡くなったTちゃんを見つめた。

「ぼくは、ジジイになるまで生きると思う。ジジイになっても遊んでくれるかな。僕って分るかな」

と自然に話かけていた。

それは、8歳の息子が自分の生と死を理解し、病気を克服する強い意志を持っていたことに私は強い感動を覚えた。

そして一筋の光がさした様に心が救われ、私の涙は止まらなかった。

 

私が息子から学んだことは、患者本人の意欲が病気を回復に向かわせるのであり、親や看護師は患者の進む道を整えることしかできない。

息子には、私の子供に生まれてきて、一番大切な患者になってくれたことに感謝する。

そしていつまでも私を専属看護師としてそばにおいてほしい。

 

このまま、治療の副作用もなく生活できれば良かったのだが、そうもいかない。

上限を超える放射線治療か白質脳症のせいかは不明だが、現在IQ低下と低身長という晩期障害と息子は闘っている。

亡くなっていった友達・家族、現在治療中の友達に比べれば贅沢な悩みだ。

治療中、森本先生に「晩期は晩期で考える。とにかく今、治して」とタンカを切ったものの、悩む私がいる。

でも結局は(生きてそばにいるからいいか)と答を出す。

 

よく「病気になんか、ならなければ良かった」と言う親がいるが、私はそう思わない。

なぜなら、病気になりたくさんの先生、子供、親など数えきれない人達と出会い、思い出ができた。

欲を言えば、もう少し手頃な白血病と出会いたかったが・・・。

決してゼロにしたいとは思わない。

 

この体験記を読み、元気になる人がいれば嬉しく思う。

先生、治療中の親から“希望の星”と言われている伊織の親になれたことを誇りに思う。

そして、治療中の子供、親には決して一人で闘っているのではない。

信念を貫くことで奇跡が起こることがある。

実際に奇跡を起こした伊織がいることを伝えたい。