体験記 ~あの笑顔をとり戻すまで~

笑顔をありがとう(5)

息子の担任の先生が始めて病室に来て、授業をしてくださった日の、息子の嬉しそうな顔、目の輝きは忘れられません。

先生は在来校(本来通学していた学校)と連絡を取りながら、勉強は勿論、工作、絵画、音楽、パソコン等、楽しい授業を毎回工夫して下さり、息子は何とか先生を帰らせないように策を巡らせるようになりました。

どんなに楽しかったかは息子の作文によく表われていると思います。

体調の良い時は、同じような入院中の子ども達と子ども病院の空き部屋をお借りして、音楽の合奏をしたり、クッキー作りを楽しんだり。

 

先生方の存在は息子だけでなく私の心の支えでもありました。

自分の子どもが生死に関わる病気にかかった時、親はショックのあまり“勉強”なんて考える余裕はありませんよね。

私もそうでした。

でも、訪問教育は勉強の遅れを取り戻すだけではなく、入院中の子ども達が唯一、外の世界の大人や学校と接する機会であると共に、いろんな事にチャレンジする場を与えてくれるのです。

そして、自信を持って在来校に戻って行ける地盤固めになるのです。

 

先生は退院して在来校に戻る時もパイプ役となって、息子の入院中の様子や病気や治療のことを在来校に出向いて伝えて下さり、脱毛のために帽子着用で登校するが、それに関するいじめや偏見の無いようにという配慮まで願い出てくださったのです。

そのおかげで、学校側も、息子が再登校するための万全の対策をとってくださいました。

養護学校の先生方の援助を得て、息子は無事、学校に復帰することができ、入院という5ヶ月のブランクなど無かったかのようにスムーズに、みんなの輪の中へと戻って行きました。

本当に感謝の一言に尽きます。