体験記 ~あの笑顔をとり戻すまで~

笑顔をありがとう(4)

3週間が経って、息子の治療計画を立ててくださっていた先生のいらっしゃる病院への転院が決まりました。

はじめの病院での入院生活にようやく慣れたところだったので、親子共々、少し抵抗がありましたが、部長先生の「息子さんのためになるから」という言葉で、気持ちを切り替え、転院先の小児科病棟の個室に移って来ました。

その病院の先生は最初のお話の時に、

「息子さんには、将来、誰よりも自分の病気について詳しく説明できるエキスパートになって欲しい。そして成長して、大人になり、結婚して子どもをつくって父となり、おじさんになって行くまで見守っていきたい。」

といって下さいました。

私はその言葉を聞いて、目の前に広がっていた暗闇の世界に、一筋の光が射していくのを見ました。

息子にも明日という日が来るのかもしれない、と入院して初めて感じた瞬間でした。

一生忘れられない言葉です。

 

こうして、私たち夫婦が希望を持ち始めた頃、再び小児科病棟の婦長さんから訪問教育のお勧めを受けました。

前向きな気持ちになっていた私は、養護学校の先生にお会いしてみることにしました。

養護学校の先生方は、長い個室生活で限られた人々としか接触していなかった日々の中で、初めて私の気持ちを素直に吐露することができた方々でした。

それまでの積もりに積もっていた私の不安、ストレス、悩みを全部受け止めて下さいました。